この記事では、位置トランスデューサに焦点を当て、いくつかの用語、そしてアプリケーションに適切な計装を指定する際の重要な考慮事項と、一般的な落とし穴のいくつかについて説明します。
この記事では、位置トランスデューサに焦点を当て、いくつかの用語、そしてアプリケーションに適切な計装を指定する際の重要な考慮事項と、一般的な落とし穴のいくつかについて説明します。
あなたは計装理論を学んだ大学時代からだいぶ経っているかも知れません。しかしあなたは正確度、分解能、再現性、その他の全ての特性はというものを知っています。あなたには良い仲間がいますが、エンジニアの多くはこの分野の技術を忘れてしまったか、本当に理解していません。計装に適用される用語と、かなり難解な技術的概念で混乱してしまいます。それにもかかわらず、お客様のアプリケーションに適した計測器を選択する上で、それらの事柄は非常に重要です。誤った選択をすると、指定されたトランスデューサ以上の費用を支払うことになったり、製品や制御システムで性能がでない可能性があります。この記事では、位置トランスデューサに焦点を当て、いくつかの用語、そしてアプリケーションに適切な計装を指定する際の重要な考慮事項と、一般的な落とし穴のいくつかについて説明します。
最初にいくつかの定義をあげます:
ほとんどのエンジニアは、精密度と正確度の違いについて曲解をしています。ターゲットに射られた矢の比喩を使って、正確度と精密度の違いを説明することができます。正確度は、標的中心への矢の近さとみなされます。
図1 – 高正確度なショット (左) と高精密度なシューティング(右)
矢が沢山射られたとき、精密度は矢の射られた範囲と言えます。全ての矢が一か所に集まったとき、その範囲は精密さがあるとみなされます。
完全に直線的な測定デバイスもまた完全に高正確です。
常に高正確度で高精密度な計測器を指定するだけでOKなどと、それはかなり単純な事なのでしょうか?残念なことに、このようなアプローチの仕方では、想定外の問題が出ます。第1に、高正確度、高精密度の計測器は高価です。第2に、高正確度で高精密度の計測器の取付は注意深く行う必要があり、振動や温度による膨張/収縮がある場合は取付不能になることがあります。第3に、高正確度、高精密度な計測器にはデリケートなものもあり、特に温度、埃、湿度、結露などの環境条件の変化により誤動作や故障が発生します。
最適な方策は、必要なものを指定することです。それ以上でもそれ以下でもありません。例えば工業用流量計の変位トランスデューサでは、流体の流れ特性が非線形である可能性が高いため、直線性は重要な要件ではありません。むしろ様々な環境条件に対する再現性と安定性が重要な要件です。
たとえば、CNC工作機械では、正確度と精密度が重要な要件となる可能性があります。したがって、変位計測器は、長期間にわたってメンテナンスなしに汚れたり濡れたりしている環境下でも高正確度(直線性)、分解能、高い再現性を有することが重要な要件です。
常に、計測器の仕様書の細部を読むことが肝要です。特に経年変化や取付誤差などの環境影響により、正確度と精密度がどのように変化するかについては注意が必要です。もう一点は、計測器の直線性がどのように変化するかを正確に調べることです。直線性の変化が単調または緩やかに変化する場合、非直線性はいくつかの基準点を用いて容易に較正することができます。例えば、ギャップ測定デバイスの場合、これはいくつかのブロックゲージで行うことができます。以下に示す例では、ある程度の非線形のトランスデューサが、比較的少ない基準点で高に直線性(正確)のデバイスによって較正されています。
図2 –緩やかに変化する非直線性センサの較正
しかし、この2番目例のように、急速に変化するデバイスは10ポイントで較正されても、その直線性はほとんど変化しません。このような急速に変化する測定特性が線形化されるには、1000ポイント以上取ることがあります。このようなプロセスにブロックゲージでは実用的ではありませんが、ルックアップテーブルの読み取り値をレーザ干渉計などの高性能基準デバイスと比較する方法が実用的かも知れません。
図 3 – 急速に変化する非直線センサの較正
光学式エンコーダは、光源を光学素子(通常はガラスディスク)に照射するか透過させることで動作します。光はディスクの格子に遮断されるか透過するかして、位置に対応したアナログ信号が生成されます。ガラスディスクは、製造メーカーが高精密度を要求できるように、驚くほど緻密な形状になっています。これらの緻密な形状が埃、汚れ、グリスなどで遮られた場合、どうなるか説明されていないことがあります。実際、ごく少量の異物であっても誤読を引き起こす可能性があります。さらに、なんの前触れなくデバイスが単に完全に動作しなくなることがあります。これは「突発故障」として知られています。また、特に光学式エンコーダと光学式エンコーダキットの正確度の問題があることはあまり知られていません。
18ビット(256kポイント)の分解能を持つ1インチの一般的なディスクを使用する光デバイスを考えてみましょう。一般的に、そのようなデバイスで要求される正確度は+/- 10 arc-secondです。しかし、大きい太字での記載の値は(しかし驚くことではありません)、ディスクが読取ヘッドに完全に相対して回転し、その温度が一定であると仮定されていることを前提としています。より現実的な例を考えると、ディスクはわずかに0.001 inch(0.025mm)偏心して取り付けられています。
偏心にはいくつかの要因の為に起こります。以下、その要因です:
図4 – 偏心した光ディスクと読取ヘッド
完璧にマウントされた光ディスクは、このような微細な技術設計を必要とし、コストが高くなります。実際には、光ディスクと読取ヘッドとが正確な位置にならないため、測定誤差が発生します。実装誤差が0.001 inch(0.0254mm)と考えれば、測定誤差は光トラック半径の周で0.001 inchに相当する角度になります。数字を簡単にするために、トラックの半径が0.5 inchであると仮定しましょう。これは、2 milliradianまたは412 arc-secondの誤差に相当します。言い換えれば、10 arc-secondの仕様正確度を有するデバイスは、データシートに記載されているよりも40倍以上も正確度が落ちます。
もし光ディスクを0.001 inch以内に正確に配置することができれば、本当にうまくいきます。現実的には、1 inchの2〜10の数千倍分の1の範囲内以上となるようなので、実際の正確度は当初計算した80〜400倍も悪くなるでしょう。
レゾルバまたは新世代の誘導デバイスの測定原理は全く異なります。測定は、ロータ(ディスク)とステータ(リーダ)間の相互インダクタンスに基づいて行われます。ある点での読み値から位置を計算するのではなく、ステータとロータの両方の全面から測定値が生成されます。その結果、デバイスの一方の部分の非同心度によって引き起こされる不一致は、デバイスの反対側部分の逆方向の効果によって打ち消されます。解像度と正確度の数値は、光学式エンコーダほど魅力的ではないことがよくあります。しかし重要なことは、この測定性能が非理想的な条件の中でも維持されることです。
図5 – 新世代の誘導IncOder – どんな環境下でも高正確度です
いくつかの新世代の誘導デバイスの測定性能は、ロータとステータの完全なアラインメントによるものではありません。実際に許容範囲(通常+/- 0.25mm)であれば、全て記載通りの分解能、再現性、正確度が得られます。さらに、誘導デバイスの記載された性能は、異物、湿度、寿命、耐久性摩耗または振動によって変化することはありません。誘導角度エンコーダのZettlexのIncOderは過酷な環境下でも信頼性の高い位置センサとなっています。