誘導型センサは、位置や速度を測定するために特に過酷な環境で頻繁に使用されています。多くのエンジニアにとって、誘導型位置センサの用語と技術は混乱の元です。今回ZettlexのMark Howardが、様々なタイプの誘導型位置センサの作動原理と長所と短所について説明致します。
誘導型センサは、位置や速度を測定するために特に過酷な環境で頻繁に使用されています。多くのエンジニアにとって、誘導型位置センサの用語と技術は混乱の元です。今回ZettlexのMark Howardが、様々なタイプの誘導型位置センサの作動原理と長所と短所について説明致します。
誘導型位置および速度センサには、さまざまな形状、サイズ、デザインのものがあります。全ての誘導型センサは、トランスの原理と交流電流に基づく物理現象を使用して動作するということになります。この原理は1830年代にMichael Faradayによって初観測されたもので、彼は第1の導電性導体が第2の導体に電流を誘導することを発見しました。Faradayのこの発見は、電気モータ、発電機、そしてもちろん、位置および速度の測定のための誘導型センサへと発展していきました。
このような誘導型センサには、近接スイッチ、可変インダクタンスセンサ、可変リラクタンスセンサ、シンクロ、レゾルバ、回転/直線可変差動変圧器(RVDTおよびLVDT)、新世代誘導エンコーダ(Incoderとも呼ばれます)などがあります。
シンプルな近接センサは、電源供給によってコイル(ループ、スプールまたは巻線と呼ばれることもあります)に交流電流が流れます。スチールディスクのような導電性または透磁性のターゲットがコイルに近づくと、コイルのインピーダンスが変化します。しきい値を超えると、これはターゲットが存在するという信号として機能します。近接センサは通常、金属ターゲットの有無を検出するために使用され、その出力はしばしばスイッチと同じように使用されます。このタイプの誘導型センサは、従来のスイッチの電気接点が問題となる可能性がある用途(特に埃や水が多い場所)において広く使用されています。車を洗車機に通す時や、飛行機に乗る時の着陸装置で誘導形近接センサを目にする機会があるかもしれません。
可変インダクタンスセンサおよび可変リラクタンスセンサでは、通常コイルに対する導電性または透磁性の物体(通常はスチールロッド)の変位に比例する電気信号を生じます。近接センサと同様に、交流で励起されたコイルに対するターゲットの変位に比例してコイルのインピーダンスは変化します。このようなセンサは一般的に、シリンダ内のピストンの変位を測定するために使用されています。(例えば、空気圧システムや油圧システムなど)ピストンは、センサのコイルの外径の上を通過するように配置することができます。
シンクロは、コイルが相対的に移動するときにコイル間の誘導結合を測定します。非常に高精度な位置検出が可能で、工業計測、レーダーアンテナ、望遠鏡などに使用されています。シンクロは極めて高価である為、今日では(ブラシレス)レゾルバに置き換えられて少なくなっています。レゾルバも、誘導型位置センサの1つですが、電気的接続はステータの巻線に対してのみ行われます。
LVDT、RVDTおよびレゾルバは、コイル(通常、1次および2次巻線と呼ばれる)間の誘導結合の変化から位置を測定します。センサの1次巻線はエネルギーを2次巻線(複数)に結合しますが、2次巻線の各々に結合されるエネルギーの比は、透磁性のターゲットの相対変位に比例して変化します。LVDTでは通常、このターゲットは巻線の内径を通過する金属棒です。RVDTまたはレゾルバでは通常、ロータの周囲に配置された巻線に対して回転する成形されたロータまたは磁極片です。LVDTおよびRVDTの典型的な用途には、航空宇宙用の補助翼、エンジンおよび燃料システム制御の油圧サーボがあります。レゾルバの代表的な用途には、ブラシレス電気モータの整流が含まれます。
誘導型位置センサの重要な利点は、関連する信号処理回路をセンサのコイルに近接して配置する必要がないことです。これにより、センシングコイルを過酷な環境に置くことができます、磁気センサや光学式エンコーダなどの他の技術のように比較的弱いシリコンベースの電子機器を検出点に配置する必要がないのです。
誘導型位置センサは、困難な状況下での信頼性の高いオペレーションにおいて長い実績があります。その為多くの場合、安全関連、安全重視、または高信頼性の用途では、誘導型位置センサが自動的に選択されます。用途には、軍事、航空宇宙、鉄道、重工業などの分野があげられます。
この確固たる評判の訳は、一般的に以下の要因の影響を受けない基本的な物理学および操作原理にあります。
基本的な操作要素(巻線コイルおよび金属部品)の性質上、ほとんどの誘導型位置センサは非常に堅牢です。確かな評判にも拘わらず、「なぜ誘導型センサはもっと多く使用されないのか?」と疑問があります。その理由は、その物理的な堅牢性が強みと弱みの両面を持っているからです。誘導型センサは、正確で信頼性があり、堅牢性ですが、大きく、かさばり、重くもあります。さらに、材料容積および慎重に巻かれるコイルの要件により、精密な巻線を必要とする高精度デバイスでは特に製造コストがかかります。単純な近接センサを除いて、より高度な誘導型センサは、主流の用途である一般または産業用としては非常に高価です。
誘導型センサが相対的に利用されないもう一つの理由は、設計エンジニアが仕様を決めることが困難な場合があることです。これは、各センサが、しばしば、関連するAC生成および信号処理回路を個別に特定して、購入することを必要とするためです。これはアナログエレクトロニクスのかなりのスキルと知識を要求されます。若いエンジニアはデジタルエレクトロニクスだけに取り組む傾向があるので、不要な「魔術」は避けなければならないような分野と考えているのでしょう。
しかし、近年、新世代の誘導型センサが市場に参入し、従来及びより主流の分野において、評判が高まっています。この新世代の誘導型センサは、通常、誘導型エンコーダまたは「Incoder」(誘導型とエンコーダのミックス)と呼ばれます。この方式では、従来のデバイスと同じ基本物理を使用していますが、大型なトランス構造やアナログエレクトロニクスではなく、プリント回路基板と最新のデジタルエレクトロニクスを使用しています。この方式は洗練されており、2D&3Dセンサ、微小変位デバイス(1mm未満)、曲線形状、高精密角度エンコーダや小型及び大型ロータリーエンコーダを含む誘導型センサの用途範囲を広げております。
基板の使用により、センサを薄い柔軟な基板上に印刷することが可能になり、従来のケーブルやコネクタの必要性がなくなります。この方式の柔軟性は、物理的にも、OEMとして顧客仕様のデザインを容易に提供できる点でも、大きな利点です。
従来の誘導型センサと同様に、この方式は過酷な環境で信頼性の高い高精度な測定を提供します。また、下記の重要な利点もあります。
従来のLVDT(上)とZettlexのリニアセンサ(中)。比較用定規(下)
この写真は、上記の利点のイメージが解るように従来の150mmストロークのLVDTとリニアアクチエータメーカーのために製造した新世代型の置き換え品を並べてみています。このビフォアアフターのダイエット写真を見比べると明らかですよね。それに新世代デバイスが、連合する信号発信および処理回路も内挿していることをみると、より利点が強調されます。この比較において、Zettlexのデバイスは次の利点があることが見て取れます。